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漫画『ガンニバル』感想。序盤のサスペンスと田舎の閉塞感がとにかく強い

 

『ガンニバル』の原作漫画を読了しました。

 

先に結論を書くと、序盤のサスペンスが抜群に面白い作品でした。

「誰が敵で、誰が味方なのか」を探る緊張感、田舎特有の閉塞感、じわじわ腹に溜まる不穏さ。このあたりの噛み合い方がよくできていたなと。

 

一方で、終盤は物語の軸が後藤家側に寄っていくぶん、僕が最初に強く惹かれた「村全体の気味悪さ」をもっと見たかった気持ちも残りました。

 

この記事では、『ガンニバル』を読んで実際にどこが面白かったかを、序盤・中盤・終盤に分けて感想ベースで書いていきます。

ネタバレに触れる箇所もあるので、その点だけご注意ください。

 

 

ガンニバル 1

 

『ガンニバル』で特に刺さったポイント 

僕にとっての本作の強さは、序盤のサスペンス、主人公の異様な頼もしさ、そして村全体の息苦しさが同時に立ち上がるところにあった。

 

ジャンルとしてはサスペンス漫画。物語序盤はミステリー色が強く、話が進むにつれて「人間の闇」に触れるホラー要素が増し、群像劇の様相を醸し出していく。

色欲・性欲が設定の根幹に大きく関わっており、人間の生々しさや執着をかなり正面から描いてくる。

 

この手の漫画にしては珍しく、メンタル的にもフィジカル的にも主人公がかなり強い。僕は基本的にホラーが苦手なのだけど、主人公がブチ抜けて強かったおかげで恐怖が大分緩和され、特に苦もなく楽しめた。

なんなら途中おかしくて笑ってしまう場面すらあった。

ラスボスっぽいバケモノ枠(超常現象枠?)が現れる→フィジカルで制圧する!の流れがあまりにもスムーズだったり、家族の救出より先に加害者を壊すことをナチュラルに優先したりと、お前のような駐在がいるかと言いたくなってしまうマイルドな宮本明(彼岸島)こそ本作の主人公である。

 

こう書くとなんとなくサイコっぽいキャラクターを想像してしまうが、人間的倫理観や職業倫理はちゃんと備えており、むしろあの極限状況でも職業倫理を遵守しているあたり相当マトモ。

物語が脱線するのを防ぐためか腹の底は敢えて描写されておらず、中盤以降は主人公としての役割を実質的に恵介に譲っていた印象はある。

しかし相変わらず強烈なキャラクターはそのままなので存在感はバツグン。「頼れる兄ちゃん」として最高のキャラだった。

 

1〜5巻の探り合いがとにかく強い

僕がいちばん面白かったのは、間違いなく1〜5巻の探り合い

「誰が敵で誰が味方なのか」「人肉食文化は本当にあるのか」「あるならどう成立しているのか」という謎が、田舎の閉塞感と噛み合って一気に読ませてくる。

この序盤のサスペンスの強さだけでも、読む価値は十分ある。

そんな序盤で本作にどハマりして、気づいたらB巻まで読み終わっていたというワケである。

 

特に田舎の表現は「そうそうそれそれ!」と、僕のような地方勢は思わず共感してしまう内容だったと思う。とにかく村民同士の横の繋がりのダルさがセリフ・表情・間のとり方等で事細かに描写されていて、思わず笑ってしまった。

僕はてっきり「村民がダルい!→後藤家がクソなだけ!」という方向性にシフトしていくのかと思いきや、最後まで、村という共同体そのものの息苦しさがしっかり残っている。

なんとなく連想したのはライザ。作品の方向性こそ全然違うが、「土地の空気」や共同体の圧が印象に残る、という意味では通じるものがあった。

 

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物語の最後に後藤家が消滅し、「まあこんな田舎でも村民にとっては居場所っちゃあ居場所だしな」と全てを許しかけるも、火のないところに煙は立たず、やはり人喰い村はどこまで行っても人喰い村だったというオチには笑顔が溢れた。

 

そんな田舎描写と、全体的にずっと不穏な雰囲気、そして前述した謎が謎を呼ぶ展開が物語の大きな「うねり」として集合していき、まるで木綿で首を絞められるかの如く、徐々に腹に重いものが溜まるのを感じながら読み進めていた。

 

恵介が得体の知れない時期の緊張感

僕的には、恵介がまだ得体の知れないヤツだった頃あたりが最も物語にのめり込んでいたかなと。

この手のホラーな漫画は、序盤の1人行動している時が1番の見どころだと思うし、味方が増えるとその分だけ緊張感が薄れてしまう気がしているからだ。

 

そういう意味では、警察介入→後藤家がまさかの優勢の場面も相当のめり込んでいた。

流石に国家権力には勝てんだろガハハ!と読み進めていたら全然そんなことはなく、警察内部にも「後藤」が居るわ、そもそも戦闘力高すぎるわで、お前らのような地主がいるかってなる。

 

読み進めていく上で、謎→ネタばらしテンポが独特なのも印象に残ったポイント。没入感を高めるためか(特に序盤は)神の視点からの描写があまり無く、主人公が情報を知るタイミング=読者が知るタイミングとして徹底されている。

 

またネタばらしの際にも、起こった事をいちいち細かく説明せず、明らかに整合性の面で怪しいところも敢えてボヤかしており、かなりテンポ重視の構成だったように思う。

そして整合性が怪しい部分を全て、「この"村"は人間を食っている」で最後に覆い隠す構成。

恐らく狙ってこういうカタチにしたのだと思うが、最後の1文で「だよな!そうだよな!」となる、あの腹のモヤモヤがスっと晴れる感覚は実に爽快。

 

終盤の感想と少し気になった点

後藤家の物語としての推進力は強い

後藤家の全貌が明らかになってからは、もう完全に「血の呪い」を乗り越える方針にシフトし、各キャラの末路や決着が淡白過ぎず・くど過ぎず描かれる。

 

終盤は着地点がある程度見えてくるぶん、序盤ほどの勢いは少し落ち着く。

しかし根本的な「村民が人肉を喰ってる話はどうなったの?」という根本の気味悪さが残り続けるので、結局先が気になって読む手が止まらない。

 

村全体の人肉食文化はもう少し見たかった

基本的に終盤も面白かったが、やはり前任駐在の狩野さんが狂った理由や、最序盤の人肉食のシーンが上手く回収されていなかったのは僕的に少し残念。

 

後藤家のイザコザに終始するよりは、どちらかというと村全体にスポットを当てた人肉食文化の結末を見たかったのが本音ではある。

が、後藤銀の呪いが廻り廻る展開が中盤以降の大きな推進力足り得ていたのも確かで、この話を抜きに供花村を語れというのも無理な話ではある。

 

本当に序盤のテンポ感はめちゃくちゃ好き。文句ナシに面白かった。

 

 

終わりに

ここまで瞬間最大風速がスゴい漫画とは久々に出会った気がします。

何度でも読み返して味わうタイプというより、読んでいる最中の没入感で一気に持っていかれるタイプの漫画でした。全13巻である程度キレイにまとまっているのも好印象。

 

内容自体はシンプルな群像劇なのに、読んでいる最中の圧や不穏さが強すぎて、読み終わったあとに上手く言葉へ分解しきれない。そこは少し悔しかったです。

ひとまず、その「うまく分解しきれないのに面白かった」が、僕の中での『ガンニバル』の面白さ、ということにしておきます。

 

わーわー騒ぎましたが僕からは以上です。読んでいただきありがとうございました。