アマプラのサブスクにて『仮面ライダーアギト』を観てきました。
大人になって観返す『アギト』は、平成ライダー入門として見やすいだけでなく、人間ドラマをじっくり積み上げた末に終盤で一気に噴き上がる作品として面白かったです。
小学生の頃に観た以来の視聴で、久々に平成ライダーを摂取してみて、まるで実家のような安心感を覚えました。
直近の平成ライダー作品では少し合わないと感じるものも多かったのですが、『アギト』は育った頃の感覚をそのまま呼び起こしてくれました。
リアル調の作風×変身ヒーロー特撮の化学反応には条件反射でワクワクしてしまうし、縦軸の連続ドラマが生み出すライブ感には「はやく続きが見たい!」が先行し過ぎて、たまのゴルフ中継に絶望したものです。
以下より感想をネタバレありで書いていきます。どうぞ気軽にお付き合いください。
序盤構成について
目覚めろ、その魂!
観返していてまず驚いたのは、謎を回収し始めるターンが記憶より遥かに遅かったこと。
1クール目に大体の謎をばら撒いて、さあ次から回収ターンか!?と思ったら、話が大きく動きだすのはまさかの4クール目からという。
これは今と昔でどっちが優れているのかを言いたいワケではなく、単に作風の違いにビックリしたという話。
第1クールは、上述の通り主に謎をばら撒くフェーズ。
メインで描写されるのは警察サイドであり、氷川さんが主にアンノウンや北條さんに翻弄されながら物語は進んでいく。
アンノウンはなぜ人間を襲うのか、「あかつき号事件」で何が起こったのか、そもそも翔一はなぜ記憶喪失になったのか。
これらの謎をとにかく散らして、終盤の盛り上がりへの種としよう!みたいな意図をビンビンに感じた。
この段階では、上記の謎や、アンノウン>未確認の強さ関係、不可能犯罪=アンノウン絡みの図式を確定させるような、いわゆる説明のための説明がメインであり、実質キャラ紹介のエピソードが殆ど。
そんでもって肝心のアギトがどういう存在なのかは全く不透明なままである。
翔一が戦う理由は割と「ヒーローってそういうものじゃん」的なノリでサラッと流すし(この段階では)、割と唐突に形態変化するし。
ついでにアギトがG3に襲い掛かった理由も未だによく分からない。
とはいえ、話の中心には大体アギトが関わるようになっており、正体バレも案外早く、この段階でのノルマはしっかりこなしていたように思う。
翔一関連はともかく、警察サイドの事情をゆっくり丁寧に描写してくれるのは僕的に凄く好みなポイントで。
順を追ってミクロに進んでいくのが心地よく、なによりココを経て迎える中盤・終盤とサラッと流して迎えるソレとでは、感じる納得感が全然違うと思う。
単に設定の下準備だからではなく、誰がどういう立場で、何を背負っていて、どこを居場所としているのかを丁寧に積むからこそ、終盤の言葉や共闘が軽くならないのだと思う。
この序盤をテキトーにやって終盤に「ただの人間だ!」的なことを声高に叫ばれても、いや言うてもそんなに苦労して無いですやん…とイマイチしっくりこないはず。
続く第2・3クールは、翔一を中心にキャラクターの人物描写がメイン。
その人物がどういう人柄なのか、戦う理由は何なのか、その回の出来事を通して何を積み上げるのか、といった部分が主に日常回を通して描かれていた。
主役ライダー3人はまあ当然として、サブキャラの描写がしっかりしていたのは印象的。
特に小沢さんは、いわゆる便利キャラ枠ではあるのだけど、「完璧であるが故に完璧ではない」というテーマでまさか人間的成長が見られるようなキャラだとは思わなかった。
この話をキッカケに警察サイドがしっかり活躍できるようになった(G3が戦果をあげられるようになった)のも印象的。僕はG3が推しライダーだったので素直に嬉しかったです。
一方で縦軸の話としては、「アンノウンの習性」をメインに少しずつ進んでいるように見えてはいたものの、あくまで過程の描写のみであり、実は話自体そこまで進んでいなかったりする。
むしろ謎が謎を呼ぶ展開であり、もはや不自然なまでに詳細が語られない「あかつき号事件」や、強烈な超能力を持った人間の登場、アギト・ギルスとは一体どういう力なのか等、要素が増えていくにつれて「アンノウンとは何なのか」という根源的な疑問が深まっていく。
僕的には、せっかく2クール分も使っているのだからもーちょい情報を小出しにしてくれた方が好みだったのだけど、ここでの"溜め"が第4クールでの大爆発に繋がっている為、まあ一長一短ということで納得した。このまったり感も嫌いじゃない。
話は前後するが、主役ライダーの掘り下げも面白かった。特に氷川さんの好青年ぶりと、涼の悩みながら前に進む姿勢は、僕としても人間的に見習うべき部分が多くあったように思う。
3人とも最初からある程度ヒーローとして出来上がっているから、少年漫画みたいに分かりやすく変わっていく面白さは薄い。
けれどそのぶん、本作は彼らが誰かと関わる中で何を守ろうとするのか、どういう人間なのかが静かに見えてくる。
この見え方は、成長ドラマというより人間ドラマとしての面白さだと思う。
誰かが劇的に別人になる話ではなく、最初からそれぞれ持っている人柄や立場が、他人との関わりを通して少しずつ見え方を変えていく。
だから本作の終盤は、成長というより、人間関係の収束そのものにカタルシスを感じる。
また、このあたりから"居場所"というワードが飛び交うようになり、ここにきて翔一の戦う理由である「皆の居場所を守るために戦う」の輪郭が見えてくる。
他ライダーの主人公達も同様だが、大雑把な正義感ではなく、あくまでミクロな視点で目標がハッキリしているという点において、僕はこの"戦う理由"に親近感が湧くというか、キャラクターをより身近に感じることができて良いなと。
究極的に言えば現実世界でもそうであり、もれなく僕も、自分の居場所を守るために働いているワケで。結局は、個人個人のソレの集合体が世間と呼ばれているに過ぎない。
ソレを守るために戦ってくれるというのだから、まさに"みんなのヒーロー"だなと。
『アギト』が面白いのは、この“居場所”の感覚が終盤までずっと残り続けるところでもあって。
大きな正義を掲げる話ではなく、それぞれが自分の立っている場所や、そこにいる人を守ろうとする話だからこそ、最後の共闘や決着にカタルシスが生まれるのかなと。
リアル調の作風×変身ヒーローというアクロバティックな作品なれど、実はとてもニチアサらしい爽やかさが根っこにある。このギャップがたまらんのです。
第4クールの爆発力とライブ感
君のままで変わればいい
そして迎える第4クール。
今までの"溜め"が全開放され、急激に明かされていく大スケールの設定と、それに伴うストーリー展開がとても楽しい。
強化フォームの解禁や3ライダーが真に共闘する展開も熱い。
ようやく沢木哲也(本物の津上翔一)や闇の力が本格的に登場しその目的が明確に語られ始めたり、ようやく「あかつき号事件」の真相が明らかになったり、ようやく翔一(本物の沢木哲也)が記憶を取り戻したりと盤面は常に大忙し。
ライブ感マシマシの最終クールだった。
まずもって、初っ端から木野薫という井上節全開のイカれたキャラが投入されるのがもう面白い。
急に本来の執刀医を殴り倒して勝手に急患の手術始めるわ、その次には2人同時に手術始めるわ、しまいには完全ソロで手術を始めるわで、もうやりたい放題すぎて爆笑してしまった。
「俺は人間を救う。だからアギトは俺1人でいい。」という???な理屈で襲い掛かってくるアナザーアギトは、言ってることの奇天烈さと見た目の異形感とのギャップでこれまた爆笑してしまったし、しかも結構強いのが更に笑いを誘う。一体なんなんだこの破天荒おじさんは。
と思っていたら、過去に囚われているからこその行動であることが明らかになって。
結果的に翔一に影響を受けて共闘、更には自分を犠牲にしてまでアギトを助けるまでになり、己の過去に自分なりの決着をつけて息を引き取る。
共闘以前が信じられないくらい良いキャラだった。
暗い過去を取り戻しても前を向く翔一や、繋がりを「アギトだから」ではなく絆として捉えている涼に影響を受ける流れは自然だし、そこから自分の弱さと戦うことに繋がっていくのも、翔一らとは別ベクトルでのヒーロー像が見えてくる。
この辺の展開はほぼ忘れていて実質初見だったが、"アギトか、それ以外か"で始まった人間関係が、最終的に"翔一だから"に収束していく流れは激熱だった。
そして、僕が終盤でいちばんグッときたのは、この人間関係の着地だった。
木野さんも、氷川さんも、涼も、それぞれ全く違う場所から動いている。でも終盤では、そのバラバラだった道が翔一を中心に少しずつ交差していく。
この関係性の変化が、本作のシナリオを、ただの連続ミステリードラマで終わらせていないと思う。
僕が終盤に熱を感じたのは、謎が明かされるから以上に、この人間関係の交差がちゃんと積み上げの先にあったから。
そんでもって、水のエルを倒して終了!かと思えばそうでなく、新たに現れた上級天使と対決・闇の力を説得する後日談へ。
同時に氷川さんの総決算を兼ねているお話でもあり、たとえアギトの力が無くても、ただの人間のままでエルロード2体を相手取る活躍には感涙してしまう。「君のままで 変わればいい」のフレーズ回収になっているのも熱い。
最後はそれぞれの進退と、翔一のレストラン開店にて〆。
この設定は後々ジオウでも活かされており、なんとなく「楽しく暮らしているんだろうな」と想像できるようなシーンになっている。
4クール目は総じてめちゃめちゃ面白く、各キャラの総決算回としてもよくできていた。涼だけ妙に不幸にされているのは納得いかないが。
一方で、津上翔一(沢木哲也)・沢木哲也(津上翔一)のややこしさや、メンタルふにゃふにゃな神、カカシの写輪眼ばりにホイホイ奪われるアギトの力など、僕的にはネタ方面でも見どころ満載だった。
特に、沢木哲也(津上翔一)が津上翔一(沢木哲也)を呼び止めるときの「津上ッ!!」呼びには視聴中に笑ってしまった。いやお前が津上なんだよね。津上のゲシュタルト崩壊。
総じて『アギト』で刺さったのは、人物同士の距離感と居場所の話を長く積んで、それを最後にちゃんと返してくれるところでした。
全体の雰囲気も、ニチアサヒーローらしさとそうでない部分の混ざり方が絶妙で、更にそこへ終盤のブーストも加わって、本作でしか味わえないライブ感を楽しめました。
その一方で、アギトの危険性への議論や警察の動き等、ライブ感へ振り切らないカッチリした印象も受けていて。
変身ポーズのカッコよさ(無性にマネしたくなる)や、バーニングフォームのカッコよさ、アナザーアギトのデザインの面白さ等々、ヒーローものらしい見所も満載。
映像が古いことを除けば平成ライダー入門用として超おススメだと思います。
わーわー騒ぎましたが僕からは以上です。読んでいただきありがとうございました。



