ヤンマガwebで連載中の囲碁漫画『伍と碁』を、無料公開分45話まで読みました。
結論から言うと、囲碁初心者でもかなり読みやすく、内容も分かりやすい漫画です。実際、僕も囲碁知識ほぼゼロですが、局面の優劣や勝敗の流れはかなり追えました。
ただその一方で、勝負漫画として期待していたほどの熱さには届きませんでした。イベントは多いのに、主人公の成長や勝負の“溜め”がやや弱く、強敵戦のカタルシスが伸びきらないという印象です。
この記事では、『伍と碁』は囲碁を知らなくても楽しめるのか、そしてなぜ個人的には刺さりきらなかったのかを、無料分45話までの範囲でネタバレありで書いていきます。
※辛口寄りの感想なので、好意的な感想だけ読みたい方はご注意ください。
『伍と碁』45話まで読んだ感想
囲碁初心者でも楽しめる読みやすさはある
囲碁を全く知らなくてもある程度楽しめる漫画だったというのは最初に提示しておきたい。ほとんど教材のような、そんな小難しい内容ではなかった。
僕の囲碁の知識は「初手五の五がヤバい」「二手目天元もヤバい」くらいだが、そんな素人でも「今どういう局面なのか」「どっちが優勢・劣勢なのか」「どういう勝ち方・負け方をしたのか」を概ね理解できた。
少年漫画的な"囲碁バトル"ではなく、"地に足のついた囲碁"をやってるのはなんとなく理解できたし、よくわからない部分は読み飛ばしても問題なかった。
要は、ルールを覚えずとも楽しめるのは良い漫画の証拠なんだろうなと。
熱くなれそうで熱くなりきれない
しかし肝心の内容に関しては、熱くなれそうな場面で微妙に熱くなれない惜しい漫画というのが最初の感想。
囲碁というロジカルな競技が題材のためか、はたまたキャラクターの掘り下げが足りていないのか、どうにも熱くなれるシーンや鳥肌が立つような場面に出会えなかった。弱火~中火くらいの火力がずっと続いている感じ。
話のイベント進行自体に大きな引っ掛かりはなく、最新話までは問題なく楽しめている。5人の大ボスに対して1人ずつ挑んでいく展開や、負けて修行する展開、その過程で仲間ができるのも、こういったストーリーに求めている過程である。
それら自体は問題ないし、割と容赦なく主人公を負けさせる漫画なので「次はどんな展開になるんだろう」という期待感もちゃんとある。だが"熱さ"にだけはいつまで経っても出会えない。それも勝負の世界が題材にも関わらず。
要は、展開自体はちゃんと動いているのに、主人公が何を乗り越えようとしていて、その過程でどう変わっているのかが少し見えづらい。
だから物語は読めるのに、勝負の熱さだけが最後まで乗ってこないのだと思う。
主人公の人物像に少し違和感が残る
主人公のブレブレな人物像は最初に気になったポイントではある。
1話時点での主人公は自信過剰メンタル劇弱なクソガキだったが、話が進むにつれ"実は向上心があるヤツだった"という事実が加えられたり、そんな向上心のある奴が"対局での諦めが早い"手癖があったりと、読んでいて「?」となる場面が多かった。
そんでもって最新話までの情報だと、囲碁教室を3ヶ月でやめてその後10年近く腐ってるような人材では絶対ない、と僕は思った。
ここに関しては、まあぶっちゃけてしまうと1話がインパクト重視な構成すぎたのが原因だとは思う。現状、設定面で足を引っ張っている要素は大体1話で出た情報なことが多い。
そしてこの違和感によって、主人公の人物像がかなりブレてしまい、「この先どんな成長を見せてくれるのか」という期待まで弱くしてしまっているように感じる。
僕がこの手の作品で見たいのは、主人公の人間的成長と、そのカタルシスである。
それも、ただ強くなるだけではあまり乗れない。今までの未熟さがどこにあって、それをどう乗り越えたのか。そして勝負の中でどう発揮されて勝利に結びついたのか。ここに"熱さ"を感じるのだ。
1話の段階で、本作の主人公は棋力だけでなく人間的にも欠けたモノがあることは示されていた。
であれば、僕が見たいのは、仇敵との対局やそこまでの積み重ねを通して、棋士としても人間としても変わっていく話となる。
だが本作は、そこが少し弱い。主人公の人物像に違和感が残るせいで、「今どこが足りなくて、何を乗り越えようとしているのか」が少し見えづらい。
その結果、成長の実感も薄くなり、勝負の熱さに乗り切れない。
僕は、多少粗があっても主人公の成長とカタルシスが噛み合っていれば乗れるタイプでもある。以前感想を書いた『2.5次元の誘惑』は、まさにその典型だった。
勝負の“溜め”が足りずカタルシスが弱い
どうにも熱くなれないのは、バトル漫画における修行編のような、"溜め"の積み重ねが足りていないからなのかもしれない。
ただ、これは単に修行パートが少ないという話ではない。前の章で感じた主人公像の違和感も含めて、本作は主人公が少しずつ変わっていく実感が薄いのだと思う。
だから熱いセリフも、強敵に勝つ展開も、「ここまで積み上げてきたものが報われた」という感覚に繋がりきらない。
修行編自体は忌避されがちな要素ではあるが、キャラクターの背骨になる部分でもある。
むしろココをロジカルに面白くできるのが囲碁漫画の強みなので、そういう積み重ねをもっと見たかったなと。
つまるところ、本作はイベントの連続で常に通常風速はある。展開自体は止まらないし、次を読みたくなる力もちゃんとある。
しかし、主人公像の納得感が薄く、その結果として成長の実感も積み上がりきらない。だから勝負の場面でも、「ついにここまで来た」という感覚が少し弱い。
納得感の低さと"溜め"の足りなさが別々にあるというより、どちらも成長のカタルシスに届ききらない原因として繋がっているのだと思う。
その意味で、僕の感想を一言でまとめるなら、通常風速はあるが、瞬間最大風速に欠ける漫画だった。面白くないというより、単純に刺さりきらなかったなと。
とはいえ、先の展開を知りたい気持ちはあるし、なにより囲碁漫画って結構レアなので、これからもぼちぼち追っていこうかなと思います。
わーわー騒ぎましたが僕からは以上です。読んでいただきありがとうございました。

